数え上げの基礎 ― 加法原理・乗法原理・順列・組合せ
加法原理・乗法原理から出発し,順列$P(n,r)$,組合せ$C(n,r)$,重複順列,重複組合せ$H(n,r)$を定義・証明する教科書スタイルの記事.全射・単射の数え上げまでを扱う.
1 加法原理と乗法原理
定義 1 (加法原理).
有限集合 が互いに素(,)であるとき,
が成り立つ.これを加法原理(rule of sum)という.
定義 2 (乗法原理).
有限集合 に対して,
が成り立つ.これを乗法原理(rule of product)という.
注意 3.
加法原理は直和(disjoint union)の濃度に,乗法原理は直積(Cartesian product)の濃度に関する基本的な等式である.組合せ論における数え上げの大部分は,この2原理の繰り返し適用に帰着される.
2 順列
定義 4 (順列).
個の相異なる元から 個を選んで一列に並べる方法の数を順列(permutation)の数といい, と書く.
定理 5.
証明.
乗法原理による.1番目の位置には 通り,2番目には残り 通り,…, 番目には 通りの選び方がある.よって . □
定義 6 (重複順列).
種類の元から重複を許して 個選び一列に並べる方法の数を重複順列の数といい, で与えられる.
3 組合せ
定義 7 (組合せ).
個の相異なる元から 個を選ぶ(順序を問わない)方法の数を組合せ(combination)の数といい, または と書く.
定理 8.
証明.
個の元を選んで並べる方法は 通りである.同じ 個の元の集合は 通りの並べ方に対応するので,. □
4 重複組合せ
定義 9 (重複組合せ).
種類の元から重複を許して 個を選ぶ(順序を問わない)方法の数を重複組合せの数といい, と書く.
定理 10.
証明.
種類の元を とし,各 を 個選ぶとすると,条件は ()を満たす非負整数解の個数を求めることに等しい.これは「 個の星と 個の仕切り」の問題(stars and bars)に帰着され, 個の位置から仕切りを置く 個の位置を選ぶ組合せの数 に等しい. □
5 全射・単射の数え上げ
定理 11 (単射の数).
,()とする. から への単射の個数は である.
証明.
単射 は の元に の相異なる元を順に割り当てることに等しく,乗法原理より 通りである. □
定理 12 (全射の数).
,()とする. から への全射の個数は
である.
証明.
包除原理による. とし, とおく.全射でない写像の集合は であり, であるから,包除原理より全射の数は となる. □
例 13.
, のとき全射の数は である.