組合せデザインとラテン方陣 ― 均衡のとれた配置
ラテン方陣の定義と存在,直交ラテン方陣(MOLS),BIBD(均衡不完備ブロック計画),Fisherの不等式,有限射影平面との関連を解説する.
1 ラテン方陣
定義 1 (ラテン方陣).
次のラテン方陣(Latin square)とは, 種類の記号を の配列に配置し,各行・各列にすべての記号がちょうど1回ずつ現れるようにしたものをいう.
例 2.
のラテン方陣の例:
定理 3.
任意の正整数 に対して 次のラテン方陣が存在する.
証明.
()と定義すれば,各行・各列に がちょうど1回ずつ現れる.これは加法群 のケイリー表に他ならない. □
2 直交ラテン方陣
定義 4 (直交ラテン方陣).
2つの 次ラテン方陣 が直交する(orthogonal)とは, と の組 が 個の位置にわたって 通りの異なる順序対をすべて実現することをいう.
定義 5 (MOLS).
互いに直交する 次ラテン方陣の集合をMOLS(mutually orthogonal Latin squares)という. 次 MOLS の最大個数を と書く.
定理 6.
.
証明.
個の互いに直交する 次ラテン方陣 があるとする.各 の第1行を正規化して の第1行を としてよい. と ()の直交性から, でなければならない(第1行第1列は両方とも なので,第2行第1列が同じならば の組が2回現れる). であり相異なるので . □
定理 7.
が素数べきのとき .
証明.
有限体 を用いる. に対して を ()で定義する.各 はラテン方陣であり, のとき と は直交する. であるから .上界と合わせて . □
3 BIBD
定義 8 (BIBD).
元集合 上の均衡不完備ブロック計画(balanced incomplete block design) とは, の 元部分集合(ブロック)の集まり であって,以下の条件を満たすものをいう:
,
任意の2元 ()がちょうど 個のブロックに同時に含まれる.
定理 9 (BIBD の基本等式).
-BIBD に対して
証明.
(1) (,,)の組の個数を2通りに数える. を固定すると 個, を固定すると 個なので .(2) 元 を固定する. を含むブロックに含まれる 以外の元は各ブロックで 個であり, 個のブロックにわたって 個(重複あり).一方, 以外の各元 と を共に含むブロックは 個あるので, 個. □
4 Fisher の不等式
定理 10 (Fisher の不等式).
-BIBD に対して (ブロック数は元の数以上)が成り立つ.
証明.
接続行列 ()を考える. であることが確認できる( は単位行列, は全成分 の行列).この行列の固有値は (重複度 )と (重複度 )であり, より なのですべて正.よって は正則であり ,したがって . □
5 有限射影平面
定義 11 (有限射影平面).
位数の有限射影平面とは,-BIBD のことである.すなわち ,, を満たす.
定理 12.
位数 の有限射影平面が存在するならば, 個の互いに直交するラテン方陣が存在する.
証明.
有限射影平面の構造から 個の MOLS を構成できる.逆に 個の MOLS から位数 の有限射影平面を構成することもでき,両者は同値である. □
注意 13.
が素数べきのとき有限射影平面は存在する( 上の射影平面 ). の場合は Euler の 36 人の士官問題に関連し, であることが Tarry(1901年)により示された. の場合は大規模計算機探索により存在しないことが1989年に証明された.