包除原理 ― 交互和による数え上げ
包除原理の証明から完全順列$D_n$,オイラーの$\varphi$関数の導出,全射と第二種スターリング数,メビウスの反転公式までを解説する.
1 包除原理
定理 1 (包除原理).
有限集合 に対して
が成り立つ.
証明.
任意の元 が右辺に寄与する回数を計算する. がちょうど 個の集合 に属するとする. の右辺への寄与は
である( なので ).よって各元はちょうど 回数えられる. □
2 完全順列
定義 2 (完全順列(攪乱順列)).
の順列 で ()を満たすものを完全順列(derangement)という.その個数を と書く.
定理 3.
証明.
とおくと,. であるから,包除原理より
したがって
□
系 4.
は に最も近い整数である.すなわち .
3 オイラーの関数
定理 5.
正整数 の素因数分解を とすると,
証明.
とおく.. であるから,包除原理より
□
4 全射と第二種スターリング数
定義 6 (第二種スターリング数).
元集合を 個の空でない部分集合に分割する方法の数を第二種スターリング数(Stirling number of the second kind)といい, または と書く.
定理 7.
証明.
元集合 から 元集合 への全射の数は である(前回の結果).全射 は の 分割に のラベルを付けたものに対応し,ラベルの付け方は 通り.よって . □
5 メビウスの反転公式
定義 8 (メビウス関数).
を
で定める.
定理 9 (メビウスの反転公式).
数論的関数 に対して,
証明.
右辺に を代入すると,
とおくと内側の和は である. とすれば であり,これは のとき , のとき であることが知られている(メビウス関数の基本性質).よって右辺は に等しい. □
例 10.
(恒等関数)とすると であるから,反転公式より が得られる.