「割り切れる」とはどういうことか ― 整数論はなぜ mod から始まるのか
mod 演算は「情報を捨てる射影」です.時計・曜日・競プロの 10^9+7 がすべて同じ構造をもつことを見抜き,整除の定義から合同式,Z/nZ の環構造への入り口までを解説します.
整数論の教科書を開くと,最初の数ページで「」という記号が登場します.しかし,なぜ整数論は割り算の余りから始まるのでしょうか? この記事では,mod 演算が「情報を意図的に捨てる射影」であり,日常の時計や曜日の計算と本質的に同じ構造をもつことを見ていきます.
1 整除の定義 ― すべての出発点
整除は一見単純ですが,強力な性質をもちます.
かつ ならば および
ならば,任意の整数 に対して
かつ ならば (推移律)
これらは証明も簡単ですが,「割り切れるという関係は線形結合で保存される」という本質を示しています.
2 除法の定理 ― 余りの存在と一意性
この定理により,余りが well-defined であることが保証されます.
3 合同式 ― 余りに注目する
合同式の強力さは,四則演算と整合する点にあります.
4 mod の直感 ― 時計・曜日・そして 10^9+7
mod 演算は日常に溢れています.
は素数です.素数を法とすると逆元が存在し,割り算もできます(後の記事で詳しく扱います)
なので,2つの余りの積が となり,64 ビット整数に収まります
5 情報の射影としての mod
6 の環構造への伏線
余りの世界に加法と乗法を入れた代数系をと書きます.
7 まとめ
整除 は整数論の最も基本的な関係です
合同式は「余りだけに着目する」操作で,加法・乗法と整合します
mod は「情報を捨てる射影」であり,時計,曜日,競プロの はすべて同じ構造です
は余りの世界に代数構造を与えたもので, が素数なら体になります
次の記事では,この mod の世界における「最大公約数」の計算法 ― ユークリッドの互除法に迫ります.