行列式は何を測っているのか ― 面積・体積・符号
2×2行列式が平行四辺形の符号付き面積を表す事実から出発し,行列式の幾何学的意味を探ります.det=0が「潰れる」こと,積公式が「伸縮率の積」であることを具体例で見ます.
教科書で行列式の定義を見ると,置換だのsgn(符号)だの,天から降ってきたような式が並びます.
いったい何を計算しているのでしょうか? 答えは「体積の伸縮率(符号付き)」です.
1 2×2 — 平行四辺形の面積
最も簡単なケースから始めましょう.2つのベクトル,が作る平行四辺形の面積は
2 3×3 — 平行六面体の体積
3次元では,3本のベクトルが作る平行六面体の体積が
3 ⇔ 潰れる
行列式がになることの幾何学的意味は明快です:像が潰れて,次元が下がるということです.
で → 平行四辺形が線分に潰れる(2次元 → 1次元以下)
で → 平行六面体が平面や線分に潰れる(3次元 → 2次元以下)
これは連立方程式の言葉では「 ⇔ に非自明な解がある」ことに対応します.
4 符号の意味 — 向きの保存と反転
行列式には正負があります.この符号は「向き」を表しています.
5 積公式
この公式の幾何学的意味は非常に明快です.
が体積を倍に変え,が体積を倍に変えるなら,(を先に適用してから)は体積を倍に変えます.伸縮率が掛け算になるという当然のことを述べています.
6 クラメルの公式 — 行列式で方程式を解く
行列式を使って連立方程式を解く公式がクラメルの公式です.の解は
7 まとめ
行列式は線形写像による体積の伸縮率(符号付き)を測っています.は像が潰れること,符号は向きの保存・反転,積公式は伸縮率の掛け算です.置換や符号関数による抽象的な定義は,この幾何学的内容を次元に一般化するための道具にすぎません.