二次剰余と相互法則 ― 平方剰余の理論
ルジャンドル記号を定義し,オイラーの規準を証明する.ガウスの補題を経て二次の相互法則を証明し,ヤコビ記号への拡張とTonelli-Shanksアルゴリズムを解説する.
1 二次剰余
定義 1 (二次剰余).
奇素数 と なる整数 に対して, が解を持つとき は の二次剰余(quadratic residue)であるといい,解を持たないとき二次非剰余(quadratic non-residue)であるという.
定義 2 (ルジャンドル記号).
奇素数 と整数 に対してルジャンドル記号を
と定める.
定理 3.
のうち の二次剰余は 個,二次非剰余も 個である.
証明.
写像 を で定める..よって各二次剰余はちょうど2つの元の像であり,二次剰余の個数は . □
2 オイラーの規準
定理 4 (オイラーの規準).
奇素数 と なる整数 に対して
証明.
が二次剰余のとき なので (フェルマーの小定理).多項式 は 上で高々 個の根を持ち,二次剰余 個がすべて根である.よって は二次剰余. より なので .二次非剰余のとき . □
3 ガウスの補題
補題 5 (ガウスの補題).
奇素数 と に対して, の での値を の範囲で代表元を取ったとき,負の代表元の個数を とすると
証明.
を上の代表元とする. は の並べ替えである( なら で または だが より後者は不可).よって かつ .両辺を で割って .オイラーの規準から結論を得る. □
4 平方剰余の第一補充法則
定理 6 (平方剰余の第一補充法則).
奇素数 に対して
すなわち が の二次剰余であることと は同値である.
証明.
オイラーの規準より である. であり, なので で である.よって が整数としての等式で成り立つ. のとき は偶数なので ( は二次剰余). のとき は奇数なので ( は二次非剰余). □
5 二次の相互法則
定理 7 (二次の相互法則).
相異なる奇素数 に対して
証明.
ガウスの補題を用いて の を格子点の計数に帰着する.矩形 を考える. の負の代表元の個数 は,直線 の下方にある格子点のうち に相当する部分の計数と一致する.対称的な議論により が導かれ( は の指数), が得られる. □
6 ヤコビ記号
定義 8 (ヤコビ記号).
奇数 ( は奇素数,重複可)に対して .
注意 9.
ヤコビ記号は相互法則を保ち,素因数分解を行わずに効率的に計算できる().ただし でも が の二次剰余とは限らない点に注意が必要である.
7 Tonelli-Shanks アルゴリズム
注意 10.
が素数 の二次剰余であるとき の解を求めるアルゴリズムが Tonelli-Shanks 法である.( は奇数)と分解し,二次非剰余 を用いて反復的に解を構成する.計算量は である.