同型定理 — 商群の正体を見破る3つの定理
同型定理は群論の中心定理ですが「結局何がうれしいのか」が見えにくいものです.det, sgn, exp など具体的な準同型を使って商群の正体を特定する過程を追い,3つの同型定理が実際にどう使われるのかを理解します.
前回,準同型写像の核と像を定義し,核は正規部分群であること,逆に任意の正規部分群は自然な射影の核であることを見ました.では商群は具体的にどんな群でしょうか.
答えは驚くほどシンプルです. — 核を潰してできる商群は,像と同型です.これが第一同型定理であり,群論全体の屋台骨となる定理です.
1 第一同型定理
この定理が何を言っているのか,前回のカタログに沿って確かめましょう.
例1:(行列式). ,(全射)です.第一同型定理より
例2:(符号).
例3:(指数関数). (単射),(全射)ですので
例4:(mod射影). ,(全射)です.第一同型定理より — 自明に見えますが,左辺は「剰余類の集合としての商群」,右辺は「上の mod 演算」です.このつが群として同じであることの保証です.
2 第一同型定理の使い方
この定理の真の威力は,未知の商群の正体を特定することにあります.
商群は定義上は剰余類の集合ですが,「具体的にどんな群か」は定義からは見えません.戦略はこうです:
核が になるような準同型 を見つける
すると で正体が判明
「はどんな群か?」— 定義から直接答えるのは困難ですが,の核がであることを見抜けば,答えはです.
もう一つ例を見ましょう.をで定めます.
(対角線部分群)
(全射)
よってです.直積群の対角線で割ると何が残るか — 第一同型定理なしでこの答えを得るのは容易ではありません.
3 第二同型定理
です.左辺は「の中でを潰す」,右辺は「の中でを潰す」— どちらも同じ群になるという定理です.
( の倍数全体)
( の倍数全体)
4 第三同型定理
これは「段階で割っても,一気に割っても同じ」という定理です.
5 3つの定理の統一的な見方
つの同型定理は全て同じパターンに従います:
適切な準同型写像 を構成する
その核 を特定する
第一同型定理を適用して を得る
つまり第一同型定理が全ての根本であり,第二・第三はその応用です.教科書がつを並列に提示するので独立した定理に見えますが,本質はつです:「準同型の核を潰すと像になる」.
6 まとめ
同型定理は「商群の正体を暴く」ための道具です.第一同型定理はによって,未知の商群を,,などの具体的な準同型の像と結びつけます.第二・第三はその応用であり,核と像を特定するという同じ手順で証明されます.「核を潰すと像になる」— この一言が群論の屋台骨です.