連立一次方程式と掃き出し法 ― 行列の言葉で方程式を解く
連立一次方程式 Ax=b を行列の言葉で定式化し,行基本変形と RREF の理論,解空間の構造(特殊解+核)を体系的に証明する.
1 行列による定式化
個の方程式,個の未知数からなる連立一次方程式
は,行列,,を用いて
と書ける.のとき斉次(homogeneous),のとき非斉次(nonhomogeneous)という.
2 行基本変形
定義 1 (行基本変形).
行列に対する次の3種類の操作を行基本変形(elementary row operation)という:
第 行と第 行の交換
第 行を 倍する ()
第 行に第 行の 倍を加える
定理 2.
行基本変形は連立方程式の解集合を変えない.
証明.
各行基本変形は可逆(同じ型の行基本変形で元に戻せる)であり,同値な方程式系を与える. □
注意 3.
各行基本変形は正則行列(基本行列)の左からの積に対応する.
3 行簡約階段形(RREF)
定義 4 (行簡約階段形).
行列が行簡約階段形(reduced row echelon form, RREF)であるとは:
零行はすべて下にある
各非零行の最初の非零成分(ピボット)は である
ピボットは上の行ほど左にある
ピボットを含む列では,ピボット以外の成分はすべて
定理 5.
任意の行列は行基本変形の繰り返しで RREF に変換できる.さらに RREF は一意に定まる.
例 6.
ここからさらに掃き出して RREF に到達する.
4 解空間の構造
定理 7 (斉次方程式の解空間).
の解全体 は の部分空間であり, である.
証明.
が部分空間であることは線形写像の核として示される.次元公式 より . □
定理 8 (非斉次方程式の解の構造).
が解 を持つとき,一般解は
と書ける(特殊解 斉次方程式の一般解).
証明.
かつ ならば ,すなわち .逆に ならば . □
例 9.
拡大係数行列の RREF:
ピボット列:第1,2列.自由変数:.特殊解 .
一般解:.
5 解の存在条件
定理 10.
が解を持つための必要十分条件は である.
定理 11.
元連立方程式 ( は )について:
解が存在する
解が存在するとき,解が一意
解が存在するとき,解は 個の自由変数を持つ