二項係数と二項定理 ― パスカルの三角形から多項定理まで
パスカルの恒等式,二項定理,ヴァンデルモンドの畳み込み,多項定理,負の二項係数,Lucasの定理を証明付きで解説する.
1 パスカルの恒等式
定理 1 (パスカルの恒等式).
のとき,
が成り立つ.
証明.
個の元の集合 から 個を選ぶ部分集合を考える.特定の元 に着目すると, 元部分集合は を含むものと含まないものに分割される. を含む場合は残り 個から 個を選ぶので 通り,含まない場合は 個から 個を選ぶので 通り.加法原理より等式が従う. □
注意 2.
パスカルの恒等式を繰り返し適用して得られる三角形配列をパスカルの三角形(Pascal's triangle)という.第 行()に が並ぶ.
2 二項定理
定理 3 (二項定理).
任意の と非負整数 に対して
が成り立つ.
証明.
に関する帰納法で証明する. のとき両辺は で成立. とし, で成立を仮定する.
と置換して整理すると, の係数は となり,パスカルの恒等式より に等しい.端の項も確認すれば結論が得られる. □
3 ヴァンデルモンドの畳み込み
定理 4 (Vandermonde の畳み込み).
証明.
個の元の集合 と 個の元の集合 ()から 個を選ぶ方法を考える. から 個, から 個選ぶ方法は 通り. について和をとると となる. □
4 多項定理
定理 5 (多項定理).
ここで多項係数は で定義される.
証明.
を展開するとき, 個の因子からそれぞれ を1つ選ぶ. を 個,…, を 個選ぶ方法の数は, 個の位置を 群に分割する多項係数 に等しい. □
5 負の二項係数
定義 6 (一般化二項係数).
, に対し,
と定める. が負の整数のとき, が成り立つ.
定理 7.
証明.
□
6 Lucas の定理
定理 8 (Lucas の定理).
を素数とし, と の 進展開をそれぞれ ,()とする.このとき
が成り立つ.
証明.
において が成り立つ(二項定理と ()による).帰納的に が得られる.
の係数を比較すれば結論が得られる. □
例 9.
:(), より .実際 より .ここで , なので となり が正しい.