剰余類とラグランジュの定理 ― 有限群論の最も基本的な定理
部分群による剰余類の定義から始め,ラグランジュの定理(部分群の位数は群の位数を割り切る)を証明します.指数の概念,フェルマーの小定理・オイラーの定理への応用,さらに逆が成り立たない例まで丁寧に解説します.
1. 導入
有限群の部分群があるとき,との間にはどんな関係があるだろうか? 例えばの部分群の位数を調べるとであり,すべての約数になっている.これは偶然ではない.
ラグランジュの定理は,この事実を一般に証明する.その鍵となるのが剰余類(coset)の概念である.
2. 剰余類の定義
3. 剰余類の基本性質
任意の に対して (各元はいずれかの剰余類に属する)
(異なる剰余類は共通部分を持たない)
すべての左剰余類は同じ濃度を持つ:
4. ラグランジュの定理
5. ラグランジュの定理の系
ラグランジュの定理から,多くの重要な結果が従う.
6. ラグランジュの定理の逆は成り立たない
恒等置換 ( 個)
-巡回置換 ( 個):
互換の積 ( 個):
7. 指数に関する定理
8. 右剰余類と両側剰余類
9. 計算例
10. まとめと次のステップ
本記事で扱った内容:
左剰余類・右剰余類の定義と,群の分割をなすこと
ラグランジュの定理:
系:元の位数は群の位数を割る,素数位数の群は巡回群
応用:フェルマーの小定理,オイラーの定理
ラグランジュの定理の逆は一般には成り立たない( の反例)
指数の乗法性と部分群の共通部分に関する不等式
ラグランジュの定理は「部分群の位数には制約がある」ことを教えてくれるが,「位数の約数ごとに部分群が存在するか」には答えない.この逆方向の問いに(部分的に)答えるのがシローの定理であり,その前段として正規部分群と商群の理論が必要になる.