固有値と固有ベクトル ― 線形写像の不変方向
固有値・固有ベクトルの定義,固有多項式,固有空間,代数的・幾何的重複度を定義し,ケーリー・ハミルトンの定理を証明する.
1 定義
定義 1 (固有値・固有ベクトル).
を 上のベクトル空間, を線形写像とする.()を満たすスカラー を の固有値(eigenvalue), を固有値 に属する固有ベクトル(eigenvector)という.行列 に対しては ()で定義する.
定義 2 (固有空間).
を の固有値とする.
を固有値 の固有空間(eigenspace)という. は の部分空間である.
2 固有多項式
定理 3.
が の固有値であるための必要十分条件は である.
証明.
() が非自明解を持つ が正則でない . □
定義 4 (固有多項式).
を の固有多項式(characteristic polynomial)という.これは の 次多項式で
定理 5.
相似な行列は同じ固有多項式を持つ.特に固有値は基底の取り方によらない.
証明.
. □
3 代数的重複度と幾何的重複度
定義 6.
固有値 の代数的重複度(algebraic multiplicity)とは, における の重複度(根としての重複度)をいう.固有値 の幾何的重複度(geometric multiplicity)とは,固有空間の次元 をいう.
定理 7.
任意の固有値 に対して
例 8.
の固有多項式は .固有値 の代数的重複度は . より幾何的重複度は .
定理 9 (異なる固有値の固有ベクトル).
が互いに異なる固有値のとき,対応する固有ベクトル は線形独立である.
証明.
に関する帰納法で示す. は明らか. まで成立するとし, とする.両辺に を作用させると .元の式の 倍を引くと .帰納法の仮定と より ().元の式から , より . □
4 固有値の性質
定理 10.
次正方行列 の固有値 (重複を込めて)について:
が正則 が固有値でない
5 ケーリー・ハミルトンの定理
定理 11 (ケーリー・ハミルトン).
を 次正方行列, をその固有多項式とする.このとき
すなわち, は自身の固有多項式を零化する.
証明.
の余因子行列を とすると . と を代入して の各べきの係数を比較し,左から順に を掛けて足し合わせると . □
例 12.
の固有多項式は .